ビール仕入ロスをゼロに近づける発注計算フォーマット|飲食店の在庫管理完全ガイド
「月末に在庫確認したら、想定より多かった」
「賞味期限切れで廃棄した分、粗利が吹き飛んだ」
「発注量の目安がわからず、毎回勘で決めている」
飲食店のオーナーさんなら、一度は経験がある悩みです。
特にクラフトビールは賞味期限が3〜6ヶ月と短く、発注ミスが直接ロスにつながります。
この記事では、発注を「勘」から「計算」に変える、具体的なフォーマットと運用方法を詳しく解説します。
なぜ発注ロスが出続けるのか
「勘発注」の限界
多くの居酒屋・飲食店が、発注を次のような方法で決めています。
- 「前回と同じくらいでいいかな」
- 「最近出てる気がするから、少し多めに」
- 「もうすぐ金曜日だから、あと2ケース」
すべて「感覚」による判断です。
感覚が当たる日もあれば、外れる日もある。結果、月末に在庫が偏ります。
ロスの本当の金額
ビールを月に15本廃棄する店の場合、次のような損失になります。
- 仕入原価:1本400円 × 15本 = 6,000円
- 機会損失:もし売れていれば1本800円 × 15本 = 12,000円
- 合計:月18,000円の損失
年間で216,000円。人件費1ヶ月分に近い金額が消えています。
これが、計算式1つで大幅に減らせます。
発注量の基本公式
使うのは次の式だけです。
発注量 =(平均週間消費数 × 補充間隔の週数)+ 安全在庫 - 現在の在庫
各要素を順に説明します。
平均週間消費数
「直近4週間の実消費量の平均」 で計算します。
例:
– 第1週:22本
– 第2週:18本
– 第3週:25本
– 第4週:21本
平均 = (22+18+25+21) ÷ 4 = 21.5本
ここで注意点が3つあります。
注意1:1週間だけで判断しない
1週間だけの数字は、たまたまイベントがあったり雨が続いたりして偏っています。必ず4週平均で見てください。
注意2:異常値を除外する
「年末の忘年会で異常に売れた週」のような突発的な数字は、平均から外します。代わりに直前の通常週を使うのが実務的です。
注意3:季節の切り替わりは注意
4月から5月など、消費量が大きく変わる季節は、過去3〜4週間の平均では追いつきません。後述する「季節係数」で補正します。
補充間隔の週数
発注から次の発注までの期間です。
- 毎週発注 → 1
- 2週間に1回 → 2
- 3週間に1回 → 3
補充間隔が長いほど、一度に多く頼む必要があります。
安全在庫
「予想外の需要増」に備える在庫です。
目安は 平均週間消費数の50〜70%。
- 補充間隔1週間:50%(平均20本なら、安全在庫10本)
- 補充間隔2週間:60%(平均20本なら、安全在庫12本)
- 補充間隔3週間以上:70%(平均20本なら、安全在庫14本)
補充間隔が長いほど、安全在庫は多めに。
現在の在庫
発注時点で、お店に残っている在庫数。
発注前に必ず棚卸し(実在庫のカウント)をしてください。POSデータだけだと、ロスや試飲分がカウントされていないことがあります。
計算例
先ほどの前提で、実際に計算してみます。
- 平均週間消費数:21.5本
- 補充間隔:2週間
- 安全在庫:13本(60%)
- 現在の在庫:8本
発注量 =(21.5 × 2)+ 13 - 8 = 43 + 13 - 8 = 48本
端数を切り上げて、ケース単位(24本/ケース)に合わせるなら、48本(2ケース)。
季節補正の計算
季節係数の考え方
ビールの消費量は、月によって大きく変動します。
一般的な居酒屋の季節係数の目安:
| 月 | 係数 |
|---|---|
| 1月 | 0.85 |
| 2月 | 0.80 |
| 3月 | 0.95 |
| 4月 | 1.05 |
| 5月 | 1.20 |
| 6月 | 1.30 |
| 7月 | 1.40 |
| 8月 | 1.45 |
| 9月 | 1.15 |
| 10月 | 1.00 |
| 11月 | 0.95 |
| 12月 | 1.35(忘年会月) |
自店の係数を出す方法
業界平均より、自店の過去1年のデータから係数を算出する方が正確です。
手順:
1. 昨年の月別販売数を出す
2. 年間平均(月ごとの平均値)を計算
3. 各月の販売数 ÷ 年間平均 = その月の係数
例:
– 昨年の年間合計:1,200本
– 月平均:100本
– 昨年7月:140本
– 7月の係数:140 ÷ 100 = 1.4
補正式
季節係数を加えた公式はこうなります。
補正後の予測消費 = 平均週間消費数 × 季節係数
発注量 =(補正後の予測消費 × 補充間隔の週数)+ 安全在庫 - 現在の在庫
Excelテンプレートで自動化
計算式を毎回頭で計算するのは非効率です。Excelまたはスプレッドシートで自動化してください。
必要な列
| 列 | 内容 |
|---|---|
| A | 商品名 |
| B-E | 直近4週の消費数 |
| F | 平均週間消費数(=AVERAGE(B:E)) |
| G | 季節係数(手動入力) |
| H | 補正後予測消費(=F×G) |
| I | 補充間隔(週) |
| J | 安全在庫 |
| K | 現在の在庫 |
| L | 発注量(=H×I+J-K) |
| M | ケース数(=ROUNDUP(L/24, 0)) |
運用手順
毎週月曜日にこのExcelを更新します。
- B-E列を最新4週に更新(1週ずらす)
- G列の季節係数を当月の値に更新
- K列に棚卸しの在庫数を入力
- L列・M列が自動計算される
- M列の数字で発注する
所要時間、10分。月に廃棄していた数万円のロスが消えます。
応用:商品別の管理
同じ計算を商品別に
クラフトビール1種類だけでなく、複数商品で同じフォーマットを使います。
- 生ビール(中ジョッキ用)
- HASSAKU SAISON
- CHA IPA
- Mochimugi GOLD
- 日本酒(各銘柄)
- ハイボール用ウイスキー
商品ごとに消費パターンが違うので、それぞれの平均と係数で計算してください。
ABC分析で優先順位を決める
全商品を厳密に管理するのは大変です。次のABC分析で優先順位を決めてください。
- Aランク(売上の70%を占める):毎週厳密管理
- Bランク(次の20%):月2回の管理
- Cランク(残り10%):月1回の確認
A品だけでも管理すると、ロスの8割は減らせます。
発注先との交渉
最小発注単位の見直し
「1ケース24本からしか頼めない」という制約が、ロスの原因になっていることがあります。
ビールメーカーや卸業者によっては、バラ売り対応をしてくれる場合があります。
交渉ポイント:
– 「小さい店なので、半ケース(12本)でお願いできないか」
– 「月の合計発注数は変わらないので、回数を増やしても良いか」
発注頻度を上げれば、1回の発注量は減らせます。
配送頻度の見直し
週1回の配送を週2回に増やせるなら、補充間隔が半分になり、安全在庫も減らせます。
配送コストが上がるケースもありますが、ロス削減額の方が大きいことが多い。ぜひ試算してみてください。
実例:月15本廃棄→月3本以下に
広島県内A居酒屋の事例
取り組み前
– 廃棄数:月15〜20本
– 月の損失:約2万円
– 発注方法:店長の勘
取り組み後(2ヶ月)
– 廃棄数:月3本以下
– 月の損失:約4,000円
– 発注方法:Excelテンプレで自動計算
何を変えたか
- 過去6ヶ月のPOSデータから平均消費数を算出
- 月別の季節係数を店独自で計算
- Excelテンプレを作成(導入に2時間)
- 毎週月曜朝の10分を発注時間として固定
導入コストは実質ゼロ。月の粗利改善額は約4万5千円、年間54万円の利益改善につながりました。
よくある失敗
失敗1:平均を短期間で出す
「先週20本出たから、今週も20本頼む」のは危険です。
先週が偶然多かった週かもしれません。必ず4週平均で。
失敗2:安全在庫を忘れる
発注量の計算で安全在庫を0にすると、繁忙期に欠品します。
「売れるときに売れない」のは、ロス廃棄より大きな損失です。
失敗3:季節変わりに対応できない
4月→5月、10月→11月など、季節が変わる月は消費量が大きく動きます。
「先月と同じでいいや」ではなく、必ず季節係数を更新してください。
失敗4:現在在庫を目視で推測する
「たぶん10本くらい残ってる」の「たぶん」が命取り。必ず実在庫をカウントしてください。
5分の棚卸しを惜しむと、数万円のロスになります。
よくある質問
Q1. 新メニューの消費予測はどうすれば?
過去データがない場合、同カテゴリの似た商品の平均から推定します。
例:新しいクラフトビール導入時は、既存のHASSAKU SAISONの初月消費数の80%を予測値として使う、など。
導入後は毎週実消費を記録し、4週で本来の平均に切り替えます。
Q2. 缶ビールと樽ビールで計算は違う?
基本式は同じです。ただし、樽ビールは開栓後の賞味期限が数日と極端に短いので、週間消費予測の精度がより重要になります。
樽の場合は安全在庫を少なめ(30〜40%)に抑え、欠品リスクを若干受け入れる運用が現実的です。
Q3. 在庫が多すぎる場合はどうすれば?
一時的に発注を止めるのではなく、消費促進に回してください。
- 該当商品を週末限定で50円引き
- スタッフが「今週のおすすめ」として声かけ
- SNSで「今だけ特別価格」として発信
「ロスの原因を売上に変える」発想に切り替えると、在庫偏りも軽減されます。
今日から始める3ステップ
ステップ1(今日):過去4週の消費数を出す
POSデータまたは納品書から、直近4週間の実消費数を集計。平均値を出してみてください。
ステップ2(今週):Excelテンプレを作る
1時間かけて、上記テンプレートをExcelに落とし込んでください。シンプルで十分です。
ステップ3(今月):毎週月曜の運用を開始
週初めの10分をこのExcel更新に使う習慣を作る。1ヶ月後には、廃棄量の違いが数字で見えてきます。
まとめ
ビールの仕入ロスは、1つの計算式で大幅に減らせます。
ポイントは4つ。
- 平均週間消費数は4週平均で出す
- 季節係数で補正する
- 安全在庫を忘れない
- 現在在庫は必ず実カウント
月に数万円のロスが消えれば、年間では50万円以上の利益改善。
発注を「勘」から「計算」へ。ぜひ今日から始めてみてください。
HIROSHIMA NOH BREWERYからのご提案
ロス削減の次は、「高粗利商品への切り替え」が効果的です。
当ブルワリーのクラフトビールは、粗利率30%前後で設定可能。同じ1本売るなら、粗利の高い商品の方が利益に直結します。
- HASSAKU SAISON(広島県産はっさく使用)
- CHA IPA(広島茶使用)
- Mochimugi GOLD(広島県産もち麦使用)
サンプル取り寄せ・卸価格のご相談は、お気軽にどうぞ。

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