事例の概要(店舗と前提)
参考にした店舗は、広島市内にある席数30席ほどの居酒屋です。それまで大手ビール中心の品揃えで、客単価は3,500円程度。「他店との差別化」と「客単価アップ」を狙ってクラフトビール導入を決断されました。
最初に入れたのは2銘柄。HASSAKU SAISONとMochimugi GOLDを、それぞれ12本ずつ仕入れるところからスタートしています。投資額は1万円台前半で、在庫リスクをかなり抑えた設計です。
1ヶ月目:選定とスタッフ教育
1ヶ月目の最重要テーマは「スタッフが自信を持って説明できる状態を作ること」です。商品を並べるだけでは注文は増えません。
実際に行った動きは次の3つでした。
- スタッフ全員で試飲会を1回実施(営業前に30分)
- 各ビールの「一言説明」をメモカードにまとめ厨房に貼り出す
- メニュー表には商品名・価格に加え、1行の説明文を追加
この段階では売上を追わず、「お客様から聞かれたら答えられる」状態に振り切るのがポイントです。実績はこの1ヶ月で2銘柄が売り切れる程度で十分と考えてください。
2ヶ月目:メニューと売り方の調整
2ヶ月目は、1ヶ月目のデータをもとに売り方を調整していきます。この店舗では、HASSAKU SAISONの方が女性客に選ばれやすいと分かったため、女性グループへの提案トークを整備しました。
具体的な調整ポイントは次のとおりです。
- 推し銘柄を時間帯や客層別に切り替える(例:20時以降はMochimugi GOLDを前面に)
- フードとのペアリング例をメニューに明示する
- 「本日のおすすめ」POPを卓上に設置し視覚的に目立たせる
この月は2銘柄を追加発注しつつ、新規にPione Aleを試験的に1ケース導入するなど、少しずつ幅を広げていきました。
3ヶ月目:定着と追加発注
3ヶ月目には売れ筋とそうでない銘柄の差がはっきりしてきます。この店舗では、HASSAKU SAISONが週15本以上の安定回転、Mochimugi GOLDは週10本の回転となり、発注サイクルを週1回で固定化しました。
定着のサインは次のような兆候で判断できます。リピーターのお客様が銘柄名で注文するようになる、スタッフが自分の言葉でおすすめを語れるようになる、メニュー表のクラフトビール欄が「見られる」ようになる、の3つです。
この段階に入れば、あとは季節銘柄の入れ替えや、イベント連動の提案など、応用の打ち手に移っていけます。
つまずきやすいポイント
3ヶ月の導入期に、多くの店舗が同じポイントでつまずきます。
1つ目は「1ヶ月目で売上を追いすぎる」こと。初月は教育と認知の期間なので、数字は気にせずスタッフの自信醸成を優先するのが正解です。
2つ目は「銘柄を増やしすぎる」こと。2〜3銘柄に絞って深く理解する方が、10銘柄を浅く扱うより売れます。
3つ目は「価格を大手ビールと揃えようとする」こと。クラフトビールは価値を説明して売るものなので、適正価格を維持しつつ説明を磨く方が長期的にうまくいきます。

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